丸投げではなく、編集指示を渡す

プロンプトから下書きへ。

AIに文章を頼むとき、もっとも大切なのは「うまく書いて」ではありません。 目的、読者、材料、制約、確認すべき点を渡し、人間が責任を持って下書きを育てることです。

AI編集

プロンプトは、編集者から助手への指示です。

AIに文章を書かせるとき、ただ「記事を書いてください」と頼むだけでは、一般的で安全そうな文章は出てきます。 しかし、それは本当に自分の発信に必要な文章とは限りません。 読者、目的、事実、制約、語調、公開後の責任が伝わっていないからです。

よいプロンプトとは、AIに丸投げする命令ではありません。 人間が持っている目的と材料を整理し、編集助手に渡す指示です。 その指示が具体的であるほど、下書きは使いやすくなります。

AIに任せる前に、人間が何を伝えたいのかを決める。

下書きの前に決める五つのこと。

プロンプトを書く前に、まず人間が五つのことを決めます。 ここを決めずにAIへ頼むと、見た目は整っていても、責任のある発信にはなりにくくなります。

プロンプト前の五項目

  1. この文章の目的は何か。
  2. 誰に読んでほしいのか。
  3. 必ず使う事実や材料は何か。
  4. 書いてはいけないこと、断定してはいけないことは何か。
  5. 公開前に人間が確認すべき項目は何か。

基本プロンプトの型。

まずは、次の型から始めます。 これは記事、公式発表、創業者メッセージ、説明文、取材依頼、訂正文などに応用できます。

基本型

あなたは編集補助者です。次の材料をもとに、[文章の種類]の下書きを作ってください。

目的:[この文章で達成したいこと]
読者:[読んでほしい人]
掲載場所:[ホームページ、発表ページ、メール、SNSなど]
語調:[落ち着いた、実務的、丁寧、初心者向けなど]

必ず入れる事実:
・[事実一]
・[事実二]
・[事実三]

注意点:
・未確認のことを断定しないでください。
・事実と意見を分けてください。
・広告的な誇張を避けてください。
・読者が誤解しそうな表現は避けてください。
・公開前に人間が確認すべき項目を最後に一覧で出してください。

AIに渡す材料を分ける。

AIに下書きを頼むときは、材料を一つの長い文章で渡すより、項目ごとに分けるほうが安全です。 事実、意見、未確認情報、書きたい気持ち、使ってはいけない表現を分けます。

材料 意味 プロンプトでの扱い
確認済みの事実 公開してよい基本情報 必ず入れる情報として渡す
創業者の意見 考え、提案、判断、価値観 意見として分かるように書かせる
未確認情報 まだ確認できていない話 断定せず、必要なら除外する
広告的表現 購入、申込、紹介、協賛に関わる表現 表示や関係性を明確にする
避けたい表現 誇張、批判、強すぎる断定 使わないよう明示する

公式発表の下書きプロンプト。

プレスリリースやお知らせの下書きを作るときは、事実を中心にします。 AIに宣伝文を書かせるのではなく、発表内容を整理させます。

公式発表用プロンプト

あなたは公式発表文の編集補助者です。 次の情報をもとに、読者が事実を確認しやすいプレスリリース風の下書きを作ってください。

発表者:[会社名・プロジェクト名]
発表日:[年月日]
発表内容:[何を発表するのか]
対象読者:[誰に関係するのか]
開始日・実施日:[日付]
公式ページ:[URL]
問い合わせ先:[メール・電話など]

背景:[なぜこの発表をするのか]

代表者コメントに入れたい考え:[創業者または代表者の考え]

注意点:
・「画期的」「唯一」「日本初」などの強い表現は、根拠がない限り使わないでください。
・事実と意見を分けてください。
・読者が確認できる情報を優先してください。
・最後に、人間が確認すべき項目を一覧にしてください。

創業者メッセージの下書きプロンプト。

創業者メッセージは、AIに丸ごと任せると、きれいだが誰でも言えそうな文章になりがちです。 自分の実体験、理由、読者への約束を材料として渡します。

創業者メッセージ用プロンプト

あなたは創業者メッセージの編集補助者です。 次のメモをもとに、誠実で読みやすい創業者メッセージの下書きを作ってください。 自慢や誇張ではなく、読者への約束として書いてください。

創業者名:[氏名]
会社名・プロジェクト名:[名称]
始めたきっかけ:[具体的な体験や課題]
支えたい読者・顧客:[誰のためか]
大切にしたい価値:[三つ程度]
まだ改善中のこと:[正直に書ける範囲]
読者への約束:[確認、訂正、誠実な説明など]

注意点:
・競合他社を攻撃しないでください。
・守れない約束を書かないでください。
・事実と希望を混ぜないでください。
・創業者本人が最後に直せるよう、自然な下書きにしてください。

訂正文の下書きプロンプト。

訂正文は、言い訳ではなく説明です。 AIに書かせる場合でも、何を間違えたのか、何が正しいのか、人間が先に確認します。

訂正文用プロンプト

あなたは訂正文の編集補助者です。 次の情報をもとに、読者に分かりやすい訂正文の下書きを作ってください。 言い訳を避け、何を間違え、どう直したのかを簡潔に示してください。

対象ページ:[ページ名またはURL]
公開日:[年月日]
誤っていた内容:[誤記内容]
正しい内容:[訂正後の内容]
訂正日:[年月日]
読者への影響:[影響の有無・程度]

注意点:
・責任をAIや第三者に転嫁しないでください。
・読者の判断に影響する部分を曖昧にしないでください。
・短く、正確に書いてください。
・必要なら再発防止の確認手順を一文で入れてください。

取材依頼の下書きプロンプト。

取材依頼では、相手への敬意、目的、公開予定、回答の扱いを明確にします。 AIに下書きを頼む場合も、相手に何をお願いするのかを人間が決めます。

取材依頼用プロンプト

あなたは取材依頼文の編集補助者です。 次の情報をもとに、丁寧で簡潔な取材依頼メールの下書きを作ってください。 相手に圧力を与えず、目的、質問内容、公開予定、回答の扱いを明確にしてください。

依頼先:[相手名・会社名]
こちらの媒体・会社:[名称]
取材テーマ:[テーマ]
聞きたいこと:[質問の方向性]
公開予定:[記事・発表・資料など]
希望回答期限:[年月日]
連絡先:[メール・電話]

AIに「確認項目」を出させる。

下書きを作らせるだけでなく、最後に「人間が確認すべき項目」を出させると役に立ちます。 ただし、その確認項目も補助です。 実際の確認は人間が行います。

確認項目を求める追加入力

この下書きを公開する前に、人間が確認すべき項目を一覧にしてください。 特に、日付、数字、固有名詞、引用、価格、条件、広告表示、読者が誤解しそうな表現を確認してください。

下書きを受け取った後の三段階。

AIが下書きを作ったら、すぐに公開してはいけません。 下書きは素材です。 公開文章ではありません。

意味を確認する

自分が本当に伝えたい内容になっているかを確認します。

  • 目的
  • 読者
  • 約束

事実を確認する

日付、数字、固有名詞、引用、条件を原資料で確認します。

  • 原資料
  • 公式情報
  • 本人確認

表現を整える

断定、誇張、広告表示、読者への影響を確認して直します。

  • 見出し
  • 断定
  • 訂正準備

悪いプロンプトと良いプロンプト。

悪いプロンプトは、AIに目的も材料も制約も渡しません。 良いプロンプトは、人間が責任を持つための条件を先に渡します。

悪いプロンプト 問題点 改善したプロンプト
すごいプレスリリースを書いて 誇張表現になりやすい 確認済み事実をもとに、読者が内容を確認できる公式発表の下書きを作って
感動的な創業者メッセージを書いて 作り話のようになる 以下の実体験と価値観をもとに、誠実で自然な創業者メッセージを作って
相手を批判する文章を書いて 不公平で危険な断定になりやすい 確認済みの事実と未確認の論点を分け、反論機会が必要な点を示して
この商品を売れるように書いて 広告表示や誇張を忘れやすい 自社商品の公式案内として、事実、価格、条件、広告的性格が分かるように書いて

プロンプトに入れる禁止事項。

AIは、求められた方向に文章を整えようとします。 そのため、使ってはいけない表現や避けたい方向を明示すると、安全になります。

禁止事項の例

  1. 未確認の事実を断定しない。
  2. 「日本初」「唯一」「必ず」などを根拠なく使わない。
  3. 競合他社を攻撃しない。
  4. 読者の不安を過度にあおらない。
  5. 広告や協賛の関係を隠さない。
  6. 法律、医療、金融、安全について専門的助言のように書かない。
  7. 存在しない引用や実績を作らない。

AIが作った文章を自分の言葉に戻す。

AIの下書きは、整いすぎることがあります。 きれいだが、誰の言葉でもない文章になることがあります。 特に創業者メッセージ、謝罪文、説明文、読者への約束では、自分の言葉に戻す作業が必要です。

自分の言葉に戻す質問

  1. この文章を自分が声に出して読めるか。
  2. 守れない約束が入っていないか。
  3. 本当に経験したことと一致しているか。
  4. 読者に対して誠実か。
  5. もっと短く、自分らしく言える部分はないか。

プロンプト記録を残す。

重要な発表や方針文では、どの材料をAIに渡し、どのように下書きを作ったかを内部記録として残すとよいでしょう。 これは読者にすべて公開する必要があるという意味ではありません。 後から確認や訂正が必要になったときに、制作過程をたどれるようにするためです。

内部記録の雛形

制作記録:[年月日]、[担当者名]が、確認済み資料[資料名]をもとにAIで下書きを作成。 [確認者名]が日付、数字、固有名詞、引用、広告表示を確認し、公開用に編集した。

公開前チェックリスト。

プロンプトから下書きへの確認

  1. 目的と読者をプロンプトに入れたか。
  2. 確認済み事実と意見を分けて渡したか。
  3. 未確認情報を断定しないよう指示したか。
  4. 広告、協賛、提供、アフィリエイトの有無を確認したか。
  5. AIに確認項目を出させたか。
  6. 下書きを人間が読み直したか。
  7. 重要な事実を原資料で確認したか。
  8. 最後に自分の言葉として自然かを確認したか。

教授が学生に渡せるプロンプト設計へ。

プロンプト設計は、単なるAI操作ではありません。 何を目的に書くのか、何が事実で、何が意見で、何を確認しなければならないのかを考える練習です。 だからこそ、ジャーナリズム教育にも、起業家教育にも役立ちます。

よいプロンプトを書く人は、AIをうまく使う人である前に、 自分の発信の責任を理解している人です。

Press.co.jp の結論

よい下書きは、よい指示から生まれる。

AIは、空白のページを埋めることができます。 しかし、何を伝えるべきか、何を確認すべきか、何を断定してはいけないかを決めるのは人間です。 プロンプトは、その責任をAIに渡すのではなく、責任ある下書きを作るための編集指示です。

最後に

AIに文章を頼むことは、悪いことではありません。 むしろ、多くの起業家にとって、発信を始める大きな助けになります。

ただし、AIに渡す前に、人間が考える。 AIが返した後に、人間が確認する。 公開する前に、人間が責任を持つ。

その流れを守れば、プロンプトは単なる命令ではなく、発信の作法になります。

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