基本ルール
発信は自由です。だからこそ、作法が必要です。
誰でも発信できる時代になりました。 起業家も、小さな会社も、地域の店も、非営利団体も、個人プロジェクトも、 自分の考えをページにして社会へ届けることができます。
それは素晴らしいことです。 けれど、自由に発信できるからこそ、読者を誤解させないための基本ルールが必要です。 事実を確認する。意見を意見として示す。広告を隠さない。 間違えたら訂正する。AIを使っても責任を手放さない。
ルールは、発信を縛るためではなく、発信を信頼に変えるためにあります。
一、事実と意見を分ける。
事実は、確認できることです。 意見は、発信者の見方です。 この二つを分けることで、読者は何が起きたのかを理解し、そのうえで自分の判断を持つことができます。
守ること
- 確認できることは、事実として書く。
- 自分の考えは、意見として分かるように書く。
- 推測や未来の予定を、確定事項のように書かない。
- 広告や自社案内を、第三者の記事のように見せない。
例
事実:このサービスは二〇二六年六月一日に公開しました。
意見:私たちは、このサービスが小さな会社の発信を助けると考えています。
予定:今後、追加機能の公開を検討しています。
二、公開前に確認する。
発信の前には、少なくとも日付、数字、固有名詞、引用、価格、条件、リンクを確認します。 小さな誤りでも、読者の判断に影響することがあります。
公開前に確認するもの
- 日付、曜日、時刻、期間。
- 数字、金額、割合、数量。
- 氏名、会社名、団体名、肩書。
- 住所、電話番号、メールアドレス、URL。
- 引用文、発言者、資料名。
- 価格、提供条件、対象者、制限。
AIが作った下書きでも、人間が確認します。 AIの文章が自然に見えても、日付や数字が正しいとは限りません。
三、情報源を大切にする。
情報は、どこから来たのかによって重みが変わります。 公式資料、本人確認、取材メモ、契約書、写真、SNS投稿、AIの回答。 それぞれの性格を分けて扱います。
情報源の考え方
- 重要な事実ほど、原資料に戻る。
- SNS投稿だけで重大な事実を断定しない。
- 匿名情報は慎重に扱う。
- AIの回答を情報源として扱わない。
- 必要に応じて確認日を示す。
四、見出しで読者をあおらない。
見出しは、読者との最初の約束です。 本文より強いことを見出しで言ってはいけません。 確認中の内容を確定のように書いたり、意見を事実のように見せたりしないようにします。
| 避けたい見出し | 問題点 | より正確な見出し |
|---|---|---|
| 会社が危機へ | 本文が可能性の説明なら強すぎる | 会社が直面する課題を整理する |
| 批判殺到 | 件数や範囲が不明 | 利用者から寄せられた主な指摘 |
| 業界を変える新サービス | 広告的で根拠が弱い | 新サービスを開始 |
五、広告と関係性を隠さない。
広告、協賛、提供、アフィリエイト、自社商品、取引先、家族、友人、投資先。 これらの関係が読者の判断に影響する可能性がある場合は、明示します。
明示する関係
- 広告や協賛を受けている。
- 商品やサービスの提供を受けている。
- リンク経由で報酬が発生する可能性がある。
- 自社商品や自社サービスを紹介している。
- 取引、投資、家族、友人、過去の関係がある。
表示文の例
この記事には広告、協賛、提供、またはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。 読者が関係性を理解したうえで判断できるよう、必要な表示を行います。
六、相手に不利益な内容は慎重に扱う。
誰かの信用、仕事、生活、事業に影響する内容を書く場合は、確認を深くします。 契約、支払い、品質、対応、トラブル、批判、過去の行為について書くときは、 相手の立場や反論機会を考えます。
確認すること
- 確認済みの事実に基づいているか。
- 相手の見解を確認する必要があるか。
- 見出しが強すぎないか。
- 発信者自身に利害関係がないか。
- 読者に必要な情報か。
- 不必要に人を傷つけないか。
七、プライバシーと被害に配慮する。
公開できる情報でも、公表すべきとは限りません。 名前、顔写真、住所、勤務先、学校名、家族、健康、金銭、被害の詳細を扱うときは、 読者に伝える価値と、相手に与える害を考えます。
配慮が必要な情報
- 子ども、被害者、弱い立場の人の情報。
- 住所、勤務先、学校、家族構成。
- 病気、事故、家庭問題、金銭事情。
- SNS投稿や個人の失敗。
- 背景に映り込んだ個人情報。
八、引用を正確に扱う。
引用は、人の言葉を預かることです。 省略によって意味を変えないこと。 直接引用と要約を混同しないこと。 発言者、文脈、出典を必要に応じて示すことが大切です。
引用で守ること
- 引用符の中は、相手の言葉として正確に扱う。
- 省略で意味を変えない。
- 見出しに引用を使うときは特に慎重にする。
- SNS投稿や一般個人の言葉を不必要に広げない。
- AIが作った引用をそのまま使わない。
九、間違えたら訂正する。
間違いが見つかったとき、黙って消すだけでは足りない場合があります。 読者の判断に影響する誤りなら、何を間違え、正しくは何で、いつ直したのかを示します。
訂正文の基本
訂正:この記事の初出時、[誤っていた内容]と記載していましたが、正しくは[正しい内容]です。 [年月日]に本文を訂正しました。
訂正は恥ではありません。 読者に向き合うための作法です。
十、AIは編集助手として使う。
AIは、発信を助けます。 見出し案、構成案、下書き、要約、確認項目の洗い出しに役立ちます。 しかし、AIは編集責任者ではありません。
AI利用のルール
- AIは下書きと整理の補助として使う。
- 事実確認の最終判断は人間が行う。
- 日付、数字、固有名詞、引用は原資料で確認する。
- 謝罪、訂正、公開判断をAI任せにしない。
- 必要に応じてAI利用を表示する。
AIは筆を軽くする。責任を軽くするものではありません。
十一、記録を残す。
発信は、流れて消える投稿だけでは足りません。 公式発表、訂正、更新、創業者メッセージ、広告表示方針、編集方針は、 あとから確認できる場所に残します。
残すべき記録
- 公式発表。
- 訂正と更新。
- 編集方針。
- 広告表示方針。
- 創業者メッセージ。
- 問い合わせ先。
- 重要な変更の履歴。
十二、読者を尊重する。
すべてのルールの中心にあるのは、読者への敬意です。 読者をあおらない。 読者に隠さない。 読者が判断できる材料を渡す。 読者が誤りを指摘できる入口を用意する。
読者は、ただクリックする数字ではありません。 発信者の言葉を手がかりに判断する人です。
Press.co.jp の結論
基本ルールは、読者への約束です。
事実を確認する。 意見と分ける。 広告を隠さない。 間違えたら訂正する。 AIを使っても責任を持つ。 その一つ一つが、自由な発信を信頼される発信に変えます。
公開前の簡易チェック。
迷ったら、公開前に次の短い確認を行います。
公開前チェック
- これは事実か、意見か、広告か。
- 日付、数字、名前、引用を確認したか。
- 見出しが本文より強くなっていないか。
- 広告、協賛、提供、利害関係を隠していないか。
- 誰かを不必要に傷つけないか。
- 間違いが見つかったら訂正できるか。
- AI下書きを人間が確認したか。
- 一年後に読まれても恥ずかしくないか。
最後に
ルールは、発信の楽しさを消すためにあるのではありません。 むしろ、長く楽しく発信を続けるためにあります。
アイデアを言葉にする。 言葉をページにする。 ページを記録にする。 その旅を守るために、発信にはルールがあります。
発信は自由です。 信頼は、ルールと作法から生まれます。